第37章 行ってみたい場所はある?

有岡里穂は阿部婆さんのそばまで歩いていって腰を下ろすと、笑いながら言った。

「さっきのおばあちゃん、声に張りがありましたね。退院も、もうすぐなんじゃないですか?」

阿部婆さんは、さっきのひとり言を聞かれていたとは思っていなかったらしく、慌てて手をぶんぶん振る。

「今のはあんたに言ったんじゃないよ。あのクソガキだよ。退院させないって言い張って、医者まで巻き込んで検査だのなんだの山ほど入れやがって」

言い終わった、その瞬間。

さっき閉まったばかりの病室のドアが、また開いた。

すらりとした長身の影が、ふいに有岡里穂の視界へ滑り込んでくる。

整った顔立ち。細長い目がわずかに細められ、ゆ...

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